M&Aの相手選び

M&Aの相手選び

相手選びの重要性

企業の将来の選択肢の一つとしてM&Aを検討する際に、やはり金銭的な条件や、従業員の雇用・待遇の維持、取引先との関係維持などは重要な事と思います。

しかし、これらを実現するためには、相手選びこそが重要になります。

但し、最初から相手企業のイメージだけでは正確には把握する事は難しく、経営者自身が希望する事項を一番理想に近く実現してくれる相手が結果として良い相手となり得ます。

但し、希望する事項を全て実現する事は、かなり稀で困難と言わざるを得ません。

そこで希望する事項を考えておき、優先順位をつけて、絶対条件を設定する必要があります。

しかし、絶対条件に固執しすぎると長年に渡って、多数の相手と交渉する事となってしまいます。

この時間と労力を許容できるとしても、複数の仲介者やアドバイザーなどに依頼した場合に、同じ候補企業に打診する事となってしまい、こうなると実現はかなり難しい事態となりえます。

そこで、絶対条件とは言っても譲歩幅は想定し、他の条件との兼ね合いや、相手経営者の個人的印象の良さなどから一定の妥協、あるいはM&A検討の中止も考えなくてはいけません。

M&Aの類型

ここでは、M&Aの方法には株式譲渡と合併と、云々の話はしません。

様々な相手がいるから、様々な要望に応じた千差万別のM&Aが実現できるという事例を紹介します。

1.現経営者が経営者として残る

一般的にM&Aを言うと、株式を譲渡し、現経営者及びその親族役員は退任すると言うイメージを持つかも知れません。

しかし、対象となる企業と相手企業によっては、株式は100%譲渡する者の、現経営者が代表者として残ってもらうケースもあり得ます。

相手企業としては現体制を維持して各利害関係者との関係を重視した方がスムーズにいくと判断できる場合に選択できます。

更に発展的には、現経営者には現在経営する企業のみならず、経営経験を活かして、グループ会社の幹部として、あるいはグループ他社の経営を委ねるケースも実際に存在します。

現経営者にとっては、オーナーとしての利潤を確保し、オーナーとしてのリスクを回避した上で経営を行う事が出来ます。

更には、グループ会社としての様々なノウハウや、人的資源を活用する事でいままで以上の発展を期待する事も可能となります。

2.現経営者の親族、役員・従業員が経営者となる

前項と類似する部分は多いですが、現経営者が退任を希望するものの、既に入社して幹部となっている親族や、親族外の役員・従業員を指名して、株主は変更するものの、当該指名を受けた者が新経営者となるケースもあります。

役員・従業員が従業員になるケースは、バイアウトファンドの資金を活用すること等によって、一般にMBOとして認識されているかと思います。

3.法人格を残す

M&Aの方法の一つである合併を行う事は、租税の面や、管理体制のシンプル化などの一定の合理性はあります。

しかし、銀行の合併の事例に見られるように、対等合併であっても社内人事にしこりが残っていたり、吸収された側が不遇な目に合うなどのデメリットがあるケースも存在します。

また、単独企業でも対外的な信用を持っている場合や、企業文化を重視したい場合、あるいは現経営者の希望がある場合などには、株式を譲渡して子会社となるものの法人としては存続させることも選択肢の一つと言えます。

この場合、経営者の個人名がついた商号の場合は変更する事が多いですが、商号を維持する場合、または親会社の名称を冠した商号になる場合、親会社の基準に合わせた商号になる場合など双方の希望に応じて決定していきます。

4.屋号を残す

法人の商号と同様ですが、小売店などで店舗の名称を双方の希望に応じて、統一的な名称にするメリットと名称を変更するデメリットを勘案して決定していきます。