相続手続きの流れ
- 2019.07.30
- 相続とは
相続手続きは非常に煩雑な手続きですが、概要としては以下の通りです。
① 遺言書の確認
遺言書の有無によって手続き方法は変わりますので、まずは遺言書があるかどうかの調査が必要になります。
では、どうやって探せばいいでしょうか?
遺言書には一般的に二つの作成方法があり、ひとつが本人が手書きで作成する遺言書(自筆証書遺言)、もうひとつが公証役場で作ってもらう遺言書(公正証書遺言)です。
この作成方法の違いにより、調査方法も異なります。
後者の公正証書遺言については原本が公証役場に保管されているので、公証役場に行けば遺言書の有無を調べてくれます。平成以降の作成であれば全国どこの公証役場でも調べられ、事前に予約をすれば、その場ですぐに結果も分かります。(もちろん、相続人等の関係者でなければ受け付けてもらえません)
一方、前者の自筆証書遺言の場合は、誰かに預けた等の事情がない限り、保管場所は本人にしか分かりません。そのため、ご本人が保管していそうな場所を探します。金庫の中や仏壇の裏、箪笥の引き出しなど、有りそうなところとしらみつぶしに探していくわけです。ここで見つからなければ「無かった」ということになってしまいます。
② 相続人の確定
遺言書があれば遺言書によって手続きを進めていきますが、無い場合は誰に相続権があるか調査しなければなりません。
例えば、夫が亡くなり妻と長男が残された場合は妻と長男に相続権がありますが、それを対外的にも証明するのが「相続人の確定」という手続きです。
具体的には、亡夫の一生涯の戸籍謄本等を取得し、妻と長男が相続人であり、同時に妻と長男以外に相続人がいないことを証明します。
ちなみに、一生涯の戸籍等は少なくとも4~5通はあることが多く、それぞれ本籍地の役所に請求することになります。
③ 相続財産の調査
相続人とともに相続財産についても調べる必要があります。
家計の管理をしていた配偶者等はそれほど詳細は調査は必要ないかもしれませんが、親の資産内容を知らない子供等が多いため、その場合は相続に漏れが無いよう入念な調査が必要になります。
具体的には、法務局で不動産の所有等を確認したり、金融機関で残高の確認等を行います。
④ 遺産分割協議
相続権がある人が相続財産について、それぞれ誰が何をどのように相続するのか決めるのが遺産分割協議です。
相続についてはこの協議が一番の難所になりますが、無事に合意ができれば「遺産分割協議書」という書面に内容をまとめ、相続人全員で署名捺印することになります。この捺印は実印で行い、印鑑証明書を添付することになります。
ご自分の実印をお持ちでない方もいらっしゃり、よく「(亡くなった)夫の実印でも良いですか?」と聞かれることがあります。
もちろんダメです。
本人の合意の証として実印を押印するので、お持ちでない場合は先に役所で登録していただく必要があります。なお、故人の印鑑(ご実印や銀行印)を使う場面はありません。
⑤ 名義変更や解約・払い戻し手続き
遺産分割協議がまとまれば、その内容に従って実際に相続人が相続財産を相続することになります。
不動産であれば故人から相続人へ名義を変更し、預貯金等は一般的には故人の口座を解約し相続人が払い戻しを受けることになります。
これらの手続きは、不動産であれば法務局で行い、金融資産については各金融機関で行います。
この手続きにおいては、②の戸籍謄本等や④の遺産分割協議書・印鑑証明書等の提出も必要です。
ここで不備があった場合は再取得・再提出を求められます。
これら①~⑤の相続手続きの期間については、2~3か月程度かかることも多いです。
よって、定期預金などは2~3か月使えないことになります。
ちなみに、貸金庫の中身の取り出しについても原則的には解約時になります。
したがって、自筆証書遺言が貸金庫にあることを知らないと、遺産分割協議を経て金融機関の手続きが終わった際に、遺言書があることを初めて知るケースもあります。自筆証書遺言の保管場所には十分に注意しましょう。
行政書士 中村直人
-
前の記事
相続税が課税される財産とは? 2019.07.30
-
次の記事
2019.9.14開催「相続が起こったら!相続後の手続きについて」 2019.08.20